この記事は後編になります。
まずは前編記事をご覧ください。
お話したひと
-
anu 代表 アン・ヨンウさん
-
anu 共同創業者 ナ・ウォノさん
-
ディグちゃん
-
Seesaw Market ディレクター
無数の課題と、揺るがない信念の先に
Image courtesy of anu
陶器という素材は非常に硬く、砕いたり研磨したりするのがとても難しいんです。当初、私たちには粉砕する技術がなかったため、協力してくれる工場を一軒一軒、必死に探し回りました。ですが、どこへ行っても断られてばかり。引き受けてくれる場所を見つけるまでに、膨大な時間を費やしました。
聞いているだけで気が遠くなりそうだ...

ようやく粉砕ができたと思っても、それを製品化するための素材として開発するのにも、また長い年月が必要でした。
「これでいける!」と確信して製品を作っても、欠陥が出てしまうことも珍しくありませんでした。そうした問題を一つずつ解決していくプロセスが、今この瞬間までずっと続いてきたんです。
ですが、ようやくノウハウが蓄積され、「この問題はこの方法で解決できる」というデータも揃いました。今では、どんな製品を企画し、この素材をどう使うべきかというプロセスが、ようやく一つの形として定まりました。

「捨てない」という選択は、すごく難しいことでもあるんですね。
困難な時期がとても長かったと思いますが、その間の自分たちの信念や、お互いに交わした言葉など、どのような心境で乗り越えてこられたのでしょうか。
10回失敗しても、1回の成功があれば、それがどれほど大切で愛おしいか…。その想いが私たちを支えてきました。
就職ではなく仲間と選んだ起業の道だからこそ、後悔のないよう全力を尽くしたい。「やりたいことはまだある」「もう少し踏ん張ろう」と励まし合ってきました。
現実的に、運営資金などの問題で「もう限界だ」と思うこともありました。しかしそのたびに不思議と糸口は見つかって。「今がどん底じゃない、ここからだ」と、極限の中で支え合ってきました。

どんな選択にも、誠実であること
最後に、私たちSeesaw Marketのコンセプトである、「Better choice, Better life.」に関連する質問です。
最近のお二人の生活の中で「よい選択(Better choice)」だったと感じた瞬間はありますか。
なにか物を買うときに、じっくり悩むんです。「安いから」と飛びつくのではなく、「これが自分の部屋にあるとき、どう感じるか」「これを着たとき、自分はどう見えるか」と。
先日、私たちのプロモーションイベントで、40分間じっくりと、鉢のわずかな違いや色味について相談しながら悩まれていた方がいました。それこそが「Better choice」に繋がる、素晴らしい姿勢だと思うんです。

個人的にも、「少しの不便さを受け入れてでも、長く満足できる選択をすること」を大切にしています。
例えば昨日、ゼロウェイスト・ショップに行ったときのことですが、家にあった空き瓶を持参し、洗剤を詰めて持ち帰りました。そうすることで、プラスチックのゴミを一つ減らせますよね。
便利な宅配サービスを使えば一瞬で届きますが、自分で詰め替えた洗剤を使うたびに、「あぁ、私はいま、心地よく生きているな」という充足感を感じられるんです。そんな暮らしを心がけています。

最近はあまり消費をしていないので、大きな買い物として思い浮かぶものはないのですが……。
私は「選ばない」ということも「ひとつの選択」だと思っています。自分を真に満たしてくれるものだけを選び取る。それが私にとっての「Better choice」です。
そのためには、自分がどんな人間かを深く知る必要があります。「何に満足し、何に心地よさを感じるのか」。

一方で、まだ自分の明確な主観や好みが定まっていない分野については、あえて多様な選択をして、経験を広げるようにしています。食べたことのないものを試したり、気になっていたものを買ってみたり。
本当に些細なことで……例えば、新しい種類のバターを買ってみるとか。毎日食べているパンを別のものに変えてみたり。そうした日常のささやかな選択が、自分を愉しませてくれる大切なエッセンスになっています。
ありがとうございました!!
正直に、誠実に、ものごとに向き合い続ける姿勢
ブランドインタビュー第四弾では、「anu」の代表 アン・ヨンウさんと、共同創業者 のナ・ウォノさんにお話を伺いました。
インタビューを通して強く感じたのは、anuは「陶器を再利用するブランド」という言葉だけでは語りきれない存在だということでした。彼らが向き合っているのは、廃棄された素材だけではありません。土という静的な素材に、何度も失敗を重ねながら対話し続ける姿勢は、とても地道で、そして誠実でした。
都市で暮らしていると、私たちはあまりにも多くのものに囲まれています。ものだけではありません。利便性や速さを優先するうちに、「本当に心地よいものは何か」を考える余白を失ってしまうこともあります。
anuのものづくりは、そんな日常のスピードをほんの少し緩め、「あなたは何を選びますか」と静かに問いかけてくれているように感じました。
anuの器を手に取ることは、単に一つのプロダクトを選ぶことではなく、自分の暮らしの中に“安らかな空間”を迎え入れる第一歩なのかもしれません。その安らぎはきっと、派手なものではなく、静かで、長く続いていくものでしょう。
本当に、数えきれないほどの苦労がありました。まず、廃棄対象の陶器を集めることからして困難の連続で、次にそれを加工するのも至難の業です。