★ブランドインタビュー

バッグのあり方を問いながら、夫婦ふたりで歩むCHOROK studio【後編】

2026-09-04
バッグのあり方を問いながら、夫婦ふたりで歩むCHOROK studio【後編】

この記事は後編になります。
まずは前編記事をご覧ください。


NAGAJA―「出かけよう」から始まる物語

Seesaw Market

そんなフィードバックを受けて、次の作品のアイデアに繋がった部分はありますか?

シン・ウンジョンさん

はい。元々「Peanut Bag」は、女性にフィットするサイズ感で設計していたのですが、大きめのサイズも作ってみたり、そこからさらにブラッシュアップして、男性の方でも気兼ねなく背負っていただけるようなバッグへとラインナップが広がっていきました。そのプロセスの中で生まれたのが「DOGU(道具)ライン」です。登山やハイキング、バックパッキングに出かける方々は、より多くの荷物を効率的に収納する必要があるので、「それなら本格的なバッグも作ってみよう!」と、段階的に発展させていく流れになりました。

CHOROK studio バッグ製品

Seesaw Market

「NAGAJA(韓国語で「出かけよう」という意味)」というコレクションもありますよね?そのコンセプトもアウトドア向けの製品となにか関係がありますか?どのようなきっかけで生まれたコレクションなのかぜひ聞かせてください。

シン・ウンジョンさん

これは、私たちがブランドの「キャッチフレーズ」を決めたいと思ったことが始まりでした。私たち二人は、性格やインドア・アウトドアの傾向が正反対なんです。代表はじっと座ってアイデアを巡らせるより、何でも外へ出て、自分の目で見て、手を動かして経験を重ねていくアクティブなタイプの人なんです。一方で私は、かなりインドア派なタイプでして(笑)。

しかし、一緒に生活をする中で、代表がしょっちゅう私に「外へ出かけよう!とりあえず外に出て風に当たりながら考えようよ」と声をかけてくれて、私も結婚する前に比べて外へ出かける機会が格段に増えたんです。

インタビュー風景

Seesaw Market

私も全く同じなので、とても共感します(笑)

シン・ウンジョンさん

実際に一歩外へ踏み出した時に感じる空気や体験って、家に閉じこもっていては絶対に味わえないものですよね。

だから、「きっと世界には私のようなインドア派の人がたくさんいるはず。そんな人たちがたまに出かける時に、私たちのバッグを背負って、少しでも晴れやかな気持ちで一歩を踏み出してもらえたら嬉しいな」と思って、「NAGAJA(出かけよう)」を合言葉にすることにしました。短くて覚えやすいので、自然とデイリーラインのプロダクトに「NAGAJA」という言葉を添えるようになりました。

用途から生まれた「DOGU(道具)」シリーズ

Seesaw Market

「DOGU(道具)」ラインの製品は、代表のお好きなテイストやこだわりが詰まったラインということですか?

イ・ジュンファンさん

そうですね。最初に作ることになったきっかけは、智異山(チリサン)の縦走に行くことになったことです。「自分で作って持っていこう!」と思い立ったことがきっかけでした。荷物をリストアップして、それがきれいに収まるバッグを作ろう」と考え付き、仕立てました。

その後、より小ぶりなものは「ランニングの時に背負ったらどうだろう?」「標高の低い山なら、どんなバッグがいいかな?」と考えながら作っていきました。好きなテイストやデザイン性というよりは、用途や機能性を突き詰めて作った、という感覚があります。

DOGU シリーズ

Seesaw Market

「DOGU」コレクションを発表されてからの反響はいかがでしたか?

イ・ジュンファンさん

かなりコアな層をターゲットにして作ったバッグなので、その用途にぴったりハマるお客様にはすごく感動していただきました。一方で「もっとラインナップを充実させてほしい」というお声もいただき、来年はもう少し増やしたいと思っています。

ディグちゃん

「道具」は韓国語でも「DOGU(도구)」...!

新品よりも馴染むバッグを作りたい

Seesaw Market

これからどのようなブランドへと成長させていきたいですか?挑戦したいことがあれば教えてください。

イ・ジュンファンさん

今考えているのは、手仕事の感じが伝わってくるようなプロダクトです。コツコツと手作業で仕立てていくからこそ伝わる、人の手の温もりが感じられるものにしていきたいです。大量生産のような効率が重視される時代だからこそ、お客様が手で触れた時に、おろしたての新品というより、どこか馴染みの良さを感じられるバッグを作っていきたいと思っています。

制作の様子

イ・ジュンファンさん

もちろん、大量に作らなければいけない現実もあるので、そう簡単ではありませんが、作り手の温もりが感じられるようなモノづくりをこれからも追求していきたいと思っています。

オンラインだけでは、そうしたこだわりを伝えるのは難しいと思うので、こうしてインタビューを通して、日本の皆様にもCHOROK studioの魅力をお伝えできれば嬉しいです。

「真のバッグらしさ」を追い求めて

Seesaw Market

「バッグを作る時に一番大切にされているポイント(素材、制作工程、デザインなど)」や、使ってくださるお客様にどんな気持ちになってほしいか、改めてお聞かせいただけますか?

イ・ジュンファンさん

これは僕の本音なのですが、「バッグらしいバッグを作る」ということです。これが実は一番難しいと感じています。

ディグちゃん

バッグらしいバッグ...?

イ・ジュンファンさん

見た目がよく、デザイン性のあるバッグはいくらでも作れます。でもバッグ本来の役割は「物を包み、一緒にどこかへ出かける」ことです。使いづらかったら意味がない。使い勝手の悪いバッグは、長く愛されませんから(笑)。だからこそ、ストレスなく快適に使えるものを作り続けたい。そこが一番の課題であり、僕が最も大切にしていることです。

バッグの細部

シン・ウンジョンさん

ずっと隣で見ていると、デザイン性と実用性のバランスを保つために、ものすごく努力しているのが伝わってきます。可愛らしくて映えるバッグというのは、世の中に溢れていますし、作り手からすればそれほど難しいことではないんです。しかし、「自分たちが真に作りたいバッグなのか?」と問われたら、答えは「NO」です。一時的に流行に乗って売れるようなものを作って終わらせたくはありません。「真のバッグらしさとは何か」を日々追求しながら、カタチにしています。

モットーはない。でも、ひとつだけ。

Seesaw Market

何か難しい壁や課題にぶつかった時、ジュンファンさんはどのような思考やマインドで乗り越えられていますか?大切にされている座右の銘やモットーなどはありますか?

イ・ジュンファンさん

....ありません(笑)特別なものは無い気がします。何と言うか、作ること自体がごく当たり前の日常なので、大げさな座右の銘のようなものは特にない気がしますね。

ディグちゃん

まさに根っからの職人さんですね!

シン・ウンジョンさん

もう次元が全く違う人なんですよね。というのも、モノづくりが呼吸や食事と同じくらい、ごく自然な日常なんです。朝起きて身支度を整えたら、そのまま作業部屋に下りて、一日中何かしらを作っている。最近は仕事量も増えて、1日12〜13時間作業することもありますし、週末も関係なく没頭しています。

真剣なまなざし

シン・ウンジョンさん

普通なら参ってしまうところですが、作ること自体が生まれ持った宿命というか、運命のように身体に染み付いているんです(笑)。作って、もっと良いものを追求する。それがあまりにも自然だからこそ、「座右の銘」や「モットー」のようなものも、あえて必要ないんだと思います(笑)。

イ・ジュンファンさん

あ、あった!思い出しました。「単なる労働者にはならない」です(笑)。気持ちや姿勢の差と言いますか。同じものを作っていても、「義務感に追われるだけの作業者にはなるまい」という思いです。自分の手で生み出す営みが、単なる作業(労働)であってほしくないんです。

インタビュー時の笑顔

ディグちゃん

そんなジュンファンさんをそばで見ていてどうですか??

シン・ウンジョンさん

本当にすごいなと思うんです。すごく疲れ果ててしまいそうじゃないですか。私自身も18年ほど会社員をしていたので、仕事って、気分が乗らない時も、嬉しい時も悲しい時も続けなければならないものだと実感しています。

それなのに、常に新しいものを生み出して、もっと良いものを作ろうと挑戦し続ける姿を見ると、「ああ、生まれ持った資質ってあるんだな」と強く感じます。

『いつか』を、今に

Seesaw Market

Seesaw Marketのコンセプトである「Better choice, Better Life.(より良い選択が、より良い暮らしをつくる)」にちなんで、お二人にとって最近「この選択をして本当に良かった」と感じるようなエピソードはありますか?

シン・ウンジョンさん

私は長年勤めた会社を辞めて、二人で本格的にブランドに集中するという選択をしたことですね。

最初は「本当にこれで良かったのかな?」という迷いもありましたが、昔から「いつか二人で一緒にブランドをやろう」と約束していたので、「その時期が少し早まっただけ」と思って飛び込んでみました。

半年ほど経って振り返ると、あの時の決断が今の自分を生き生きとさせてくれていると感じます。まさに「Better choice, Better Life.」を体現できている気がして、心から満足しています。

お二人のツーショット

Seesaw Market

お二人の姿を見ていると、理想の夫婦像のように感じられます!

シン・ウンジョンさん

あまりお勧めはしませんけどね(笑)!

一番遠い未来のスケジュールが「明後日」

Seesaw Market

それでは最後に、お二人にとって「Better Life(よりよい人生)」とはなんだとお考えですか?

シン・ウンジョンさん

以前は大げさに考えていた気がします。何か大きなことを成し遂げたり、有名になったり、そういう夢を思い描いていて(笑)。このブランドに合流したら、急に有名になれるんじゃないかと思ったりもしました(笑)。でも実際は、地道に一歩一歩積み重ねていくものですよね。だからこそ、少しずつでも前に進んでいるという実感を、一週間に一度、一ヶ月に一度でも実感できることが大切なんだと思います。

そのためには、自分自身と誠実に向き合って、ひとつひとつ選択していくこと。そうやって少しずつ努力を重ねながら、自分自身に心地よい満足感を感じられることこそ、豊かな人生なんだと最近思うようになりました。

イ・ジュンファンさん

僕は......よく分からないですね(笑)。良い人生か…普通、明日の予定はあるじゃないですか。だから「明後日の予定まで見通して準備できること」、それこそが豊かな人生なんじゃないかな(笑)?

シン・ウンジョンさん

なんだか哲学的な回答ですね(笑)。

談笑するお二人

Seesaw Market

「あまり遠い未来の予定は決め込まない方が良い」という意味でしょうか?

イ・ジュンファンさん

僕にとって一番遠い未来のスケジュールが、「明後日」なんです。普段は明日くらいまでしか考えずに動いているので、明後日という少し先のことまで思いを巡らせながら、着実に歩みを進めていくというニュアンスです。

シン・ウンジョンさん

一日のスケジュールがぎっしり詰まっているので、余計にそう感じるのかもしれません。今日やるべきことをやり切り、明日の予定が見えて、さらに明後日のイメージまで鮮明に描けている状態というのは、今の代表にとって「順調に進んでいる」「今自分はしっかり歩めている」と感じられるバロメーターなのだと思います。

CHOROK studio 作業スペース

編集後記

職人気質なデザイナーのジュンファンさんと、快活で聡明なウンジョンさん。性質がまったく異なるお二人ですが、話を聞いていると、まるでパズルのピースのようにぴったりとはまっているのが印象的でした。ジュンファンさんが手を動かして形にし、ウンジョンさんが「なぜ?」と問いながらその価値を紐解いていく。息のぴったり合ったお二人の掛け合いから、CHOROK studioのものづくりが生まれているのだと感じました。

「バッグらしいバッグ」を追い求め、デザイン性だけでなく、使いやすさや機能性まで妥協せずに向き合う姿勢。効率が重視される時代だからこそ、手仕事の温もりを残していきたいという想い。

お二人がそれぞれの得意なことを持ち寄り、問い、考え、手を動かしながら少しずつ形にしていく。その歩みそのものが、CHOROK studioというブランドをつくっているのだと思います。

ぜひCHOROK studioのプロダクトを手にして、手仕事ならではの馴染みやすさ、追求された使いやすさをぜひ感じてみてください!

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